広辞苑によると主体性とは「ある活動や思考などをなす時、その主体となって働きかけるさま。他のものによって導かれるのでなく、自己の純粋な立場において行うさま。」とある。
文部科学省が平成29年3月に改訂した幼稚園・小学校・中学校の学習指導要領において「主体的・対話的で深い学び」をキーワードとして、子どもに「生きる力」を育むために、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を求めた。しかしながら、長年小学校おいて勤務してきた経験を持つ私からすると、それまでも多くの小学校の現場では子どもが自ら学ぶ授業を校内研修のテーマに掲げ、実践してきた。私も「問題解決的な学習」を取り入れ、子どもが学習課題に対して予想し、解決方法を考え、それに基づいて個人やグループで活動しながら課題解決を図る学習を展開してきており、今までと同じ考え方で教育していけばいいなと思っていた。ただ、今までの評価の4観点が3観点となり、特に「学びに向かう力、人間性など」という新たな観点は、他の2観点をどんな方向で機能させていくかを決める大切な観点として認識してきた。小学校学習指導要領は改訂後2年間の移行措置を経て令和2年度から全面実施となった。
一方、幼稚園教育要領は改訂直後の平成30年度から全面実施となり、これに併せて厚生労働省も保育所保育指針を改訂し、平成30年度から実施されている。ここでも他の学校種同様3観点の視点を大切にした保育・教育を実践するように求めている。本学の附属認定こども園でも、令和3年1月の中教審答申を受け、令和4年度から「~子どもを中心とした21世紀型教育・保育へ~」をテーマにし、子ども一人一人の興味・関心を大切にした子ども主体の保育を展開されている。1回限りの活動ではなく、子どもの興味・関心をもとに連続した活動が行われている。活動している子どもの顔は今まで以上に生き生きとし、ワクワク・ドキドキの思いがあふれているように見える。また、学生の実習でたくさんの園を訪問させていただくが、県内の多くの園で子ども主体の保育が展開されてきているように感じている。
このような保育・教育の環境の中で育った子どもは主体性が育まれ、自主的に身の回りのことに関わろうとする力が付いていくものと考える。このような保育・教育が展開され始めた今だからこそ小学校もしっかりと幼保小連携を図り、子どもの主体性を大切にした授業やその他の活動を展開してほしいものである。特に小学校1・2年生の生活科は、具体的な活動や体験を通して、身近な人々や社会や自然に関する気づきを大切にしながら、生活上必要な習慣や技能を身に付けたり、考えたり自分で表現したり、自分で働きかけ生活を豊かにしようとする態度を育てたりする教科であり、ここでは保育所や幼稚園での育ちが十分に発揮されることだろう。
ところでアクティブ・ラーニングの必要性を一番強く求められているのは、我々高等教育機関である。本学でもそれぞれの先生方によって従来の一方的な講話のみの授業から学生に興味関心を持たせる授業へと改善されている。将来の自立に向けた知識や技能、基本的な資質の獲得に向けて主体的に学んでほしいと強く思う。また学生のみならず我々教える側も主体的に研究に励むとともに、担当科目の授業にさらなる工夫をしていかねばならないと強く思う昨今である。
※本日のテーマと関連する授業は、「教職概論」です。