子どもたちが少し緊張した面持ちで目を輝かせ、小さな手を大きく動かすクッキング保育。一見単なる保育活動に思えるこの取り組みは、実は子どもの成長における素晴らしい学びの機会なのです。

クッキング保育は子どもたちが、食材の色、匂い、感触を直接体験することができます。小麦粉をふるう瞬間の白い粉雪、野菜に包丁を入れた瞬間の鈍い音、生地をこねる柔らかな感触。これらの五感を育む豊かな体験は、子どもの感覚を研ぎ澄まし好奇心を育みます。

レシピという「設計図」から、自分たちの手で実際に料理を作り上げて味わう瞬間は、子どもたちにとって素晴らしい達成感へと繋がります。失敗を恐れず挑戦する勇気と、少しずつ自分で出来ることが増えていく喜び。これらは子どもたちの創造力と自信につながる大切な経験です。

計量カップやクッキングスケールを使うこと、材料の重さや数、比率を考えること。これらは幼児期の数学的思考や科学的観察力を自然に育ててくれます。「なぜ」「どうして」という探求心は、このような実践的な活動から生まれるのです。

食材の生産から食卓に届くまでのこと、調理の手順や手間、栄養について学ぶことで、食べ物の命や、作ってくれる人への感謝の気持ちが芽生えます。「いただきます」の本当の意味を、単なる言葉以上に深く理解できるようになるための時間でもあります。

みんなと一緒にするクッキングは、安全に行うためにルールを守ることや、協力し合う力を育て、相手を思いやって互いに助け合う温かさを学ぶ絶好の機会です。調理や共食で感じた様々なことを表現し、言葉を交わし、笑い合いながら、社会性の基礎を築いていきます。

クッキング保育は、決して美味しいものを作るだけの活動ではありません。それは、子どもの連続的で全人的な成長を支える素晴らしい活動といえます。子どもたちの小さな手がせわしなく動き、キラキラと笑顔を輝かせるクッキング保育の経験は、子どもたちが大きな可能性を感じ、まるで魔法のように美味しいものを作り出す、未来を豊かに彩るかけがえのない時間です。

保育士養成課程における学びには、栄養学の授業があります。子どもたちの成長を支える食育を一緒に考えてみませんか。