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本学の保育科教員がイタリアの幼児教育について研究するため現地視察を行いました

 保育科教員の後藤祐子先生、大坪祥子先生がイタリアの保育・幼児教育について研究するため現地視察を行いました。

フィンランドにおけるレッジョ・エミリア・アプローチ

フィンランドのエスポ―にある大学にて国のレッジョ・エミリア・アプローチの第一人者である教授のレクチャー及びワークショップを体験することができました。レッジョ・エミリア・アプローチとは北イタリアにあるレッジョ・エミリアの町で発展した教育理念で、子どもを既に力を持っている一人の人間として尊重し、子どもの主体性を重んじた教育手法を実践するというもので、世界中の保育・幼児教育において注目されています。特徴として、カリキュラムは事前に決まっているわけではなく、子どもの興味や関心を重視し、子ども達が学びたいことが探究できる環境を提供します。子ども達は自分がやっているプロジェクトについて朝のミーティングで話したり、これからやってみたいことについて話したりします。保育者の助けを借りながら子ども達はプロジェクトを通じて一人で探求したり、友達と協力したりしながら学ぶというものでした。教授は、
1.子どもが自由に動き回れること、
2.  透明であること(中から外、外から中が見える)、
3.広場のような皆が集まることができる場所があること、
4.作品を作ったり描いたりすることができるアトリエがあり、子どもの心が動くものがあること、
5.自然光(太陽の光が入ってくる、大きなガラスの窓があり、中と外が繋がりを感じられる)
が大事であると述べられました。

アアルト大学(旧ヘルシンキ大学)での講義の様子
レッジョ・エミリア・アプローチの実践について学びました

ミラノ・チルドレン・ミュージアム

レッジョ・エミリア・アプローチの第一人者であり、教育家のローリス・マラグッツィは子ども達には100の言葉があるとしています。これはレッジョ・エミリア・アプローチの理念を表しており、「100の言葉」とは子どもが表現するために使う多様な方法や手段(言葉だけでなく、絵や音楽、動きなど)を指しています。このミュージアムでは、子どもたちは自由に遊ぶことができ、さまざまな発見をしたり作り出したり、不思議に思うことを試したりできるものが準備され、子どもたちの無限大の可能性を引き出す場所となっていました。置いてあるものの一部は地域の企業が廃棄した素材で、子ども達はそれらを使って創造的に新しく作り出したり発見したりすることが可能です。また、ICTを駆使したコーナーや色や素材へこだわったコーナーが見られ、いずれも子どもの好奇心や探求心を掻き立てる環境となっており、子ども達が体験を通して学ぶことができる仕組みとなっていました。ここでの活動は研究活動にもつながっているとのことでした。

ローリス・マラグッツィ・センター入り口

ミュージアム内では色の不思議も体感できる仕掛けがたくさんでした

マイクロスコープで自然物や多様な素材をミクロの世界で体験できる場所もあります

たくさんのマテリアル(多様な種類の廃材や自然物など)が用意されていて自由に遊べる空間もありました

感性を刺激する様々な素材

子どもたちの作品も展示されています。自由で創造的な営みが感じられます

ジュリア・マラモッティ保育園訪問

レッジョ・エミリア・アプローチを行っている園で、園には0歳から3歳の保育所と3歳から6歳の幼児学校があり、今回は保育所を訪問させていただきました。園には保育者の他に、アトリエスタと呼ばれる芸術専門家とペタゴジスタと呼ばれる教育専門家がおり、協働で活動していました。この園は1 透明感、2 光、3 可動性、4 立体性、 5 階段を重視して建設されたとのことでした。窓はガラス張りになっている部分が多く、さまざまな大きさも形のものがありました。室内から広場、厨房を見ることができ、園内で起こっていることを同時に感じることができる空間となっていました。光はただ単に明るいだけでなく、光を使って遊ぶこともできました。

保育園の入り口

ジュリア・マラモッティ保育園の外庭
広い敷地に可動式の箱(遊び場)があり、色の不思議に気づくように設計されています。

オペラ・ナツィオナーレ モンテッソーリ幼稚園(モンテッソーリ・メソッド)

モンテッソーリ・メソッドは「子どもは生まれながらにして、自発的に学び始める力を持っている」と捉えており、モンテッソーリ教具を環境として整えているのが特徴です。子ども達が自立してすべてのことができるように環境を整えており、支えるのが保育者の役目です。訪問した園は3歳から6歳の異年齢クラスで編成されており、その中の5歳児が教具を使って普段どのように遊んでいるのかを見せてくれました。その女の子は一つ一つの教具の特徴を捉えて集中して遊ぶ姿を見せてくれました。4名の先生でクラスを運営していましたが、4名のうち1名は英語で話をする先生で、それはこの園がイタリア銀行の幼稚園であり、企業からのリクエストでそのようにされているとのことでした。モンテッソーリ教具はどの園も同じものが配置されており、5歳児がやっているのを3歳児や4歳児は生活の中で見ており、そのうち自分でもできるようになることを想定しているとのことでした。

園の入り口までつづく長い長い歩道。ローマにあるこの園は歴史的な建物に囲まれた場所にありました

園内の環境。教具を使って“勉強”するのではなく、子どもたちが遊びながら感覚を通して感じたり、気づいたりする姿が印象的でした

感想

2024年12月にイタリア幼児教育を学ぶ研修へ行かせていただきました。
イタリア幼児教育と言えば、「レッジョ・エミリア・アプローチ」現地で実際の園を視察できるということで、期待に胸躍らせながらイタリアを訪れました。レッジョ・エミリア・アプローチとは、イタリアのレッジョ・エミリア市で発展した幼児教育アプローチとして知られ、教育家のローリス・マラグッツィ氏が提唱した「子どもたちの100の言葉」を教育理念としています。“子どもには100の言葉がある。大人はそのうち99を奪ってしまう”とローリス・マラグッツィ氏は語っています。子どもが主体であること、子どもの創造的な表現を引き出すことに重点が置かれ、子どもを学びの中心に据え、子どもの創造性、好奇心、自己表現を尊重することを大切した教育・保育が行われています。特にアート活動が盛んで、アトリエリスタと呼ばれる美術やデザインの専門家が保育現場に必ず配置されており、日々子どもたちとプロジェクト型の活動を展開しています。保育現場には、「Piazza(広場)」という場所もあり、自由に集うことも大事にされ、建物は光の入り方や、窓の配置、室内の設計すべてに意味があり、子どもたちの感性に働きかける環境がありました。
また、今回はモンテッソーリ教育の実践園も訪問することができ、子どもたちが感覚をたくさん使いながら育つ姿を目にしました。子ども自らが持って生まれた可能性を自由に創造し、表現し、自らの生きる力を発揮していく大事だと2つの園を訪問し共通して感じました。
我々もたくさん感性を刺激された旅でした。子どもたちが持って生まれた感性という宝物を大事に育てるための関りや環境を創造していく大人でありたいものです。

保育科 後藤祐子、大坪祥子